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森のくまさん

更新日:2020年7月10日

亀成園のすぐ近くで、ツキノワグマの目撃情報があり、警戒態勢が取られ、捕獲されるという一連の出来事がありました。

※写真はイメージです


1メートルに満たないような小さな熊だったようですが、本当に目と鼻の先であり、子供たちの通学路でもあったので、早く事態が収まって一安心です。


この辺りの地域は地名が「森」なので、どこかのどかなイメージが付きまといますが、野生の熊に出くわしたら最悪の場合を覚悟しなければなりません。冬眠前後の時期と違って夏のこの時期は食べ物も豊富にあり、熊のほうから向かってくることはまずないのですが、なわばりができてしまったら危険です。もし田畑に出没するようになると放っておくわけにはいきません。亀成園にとっては鶏小屋を壊されたら大変です。とにかく力の強い大型の生き物なので、里山におりてくると生態系にも影響が出てしまいます。なんとか山の奥に戻ってほしい。熊の目撃情報から数日、そればかりを願っていました。


熊は恐るるに足る危ない生き物なのですが、山にとってはなくてはならない大事な生き物です。熊がいてこそ山は保たれると言っても過言ではありません。大型の生き物が居て、小型の生き物が居て、大きな木が育ち、小さな草花が育つ。多様な生き物がバランスを保って生態系を形作っています。日本の山にはもう狼がいないので、熊はとりわけ重要なのです。けれど頻繁に人家に降りて田畑を荒らす癖がついてしまうと、もう山に帰すわけにはいかなくなります。アイヌ文化にあったように神送りの習慣が残っているといいのですが、現実は殺処分。人は守られても熊が守られない世の中にはなってほしくないなと思っていました。


今回はご近所の猟師さんのくくり罠にかかり、県の職員さんが麻酔銃で眠らせ檻に入れ、山奥に放して事なきをえました。多分発信機も付けられたので今後山を下りてくるようなことがあれば早急に発見することができるのでしょう。無事でいてくれるといいです。


ほんの数日の出来事でしたが、地域には緊張感が走りました。多くの人にとっては不安が大きかったのかもしれませんが、個人的には生き物発の緊張感は悪くないとも思うのです。熊だけでなく蛇にしても。今自分たちがいる地はヒトだけのものではなくて、たまたま居合わせている。現実はアスファルトで固められた道路を自動車で走らさなければ暮らしていけないけれど、山が削られ川が埋められヒトだけが生きることを許されたような場所では私は到底生きていけません。近くの山のどこかに熊がいる。突き飛ばされたらひとたまりもないような猪もいる。もしかしたらもしかしたら狼もいるのかもしれない。そういう獣の息遣いをどこかに感じながら暮らすのが好きです。ものすごく近くまで下りてきて欲しいとは思わず住み分けたいのはやまやまですが、こちらが山を荒らしてしまえば代償は払わなければいけない。大きなくくりの中で共に生きていきたい。熊が暮らす場所を守れる仕事がしたい。そう思っています。


それにしても頼りになるのは熟練の猟師さんです。亀成園の園主もくくり罠で猟をするようになって三年。得意な地道な努力のおかげで少しずつ腕を上げ、猟に興味を持った人にいっぱしのレクチャーができるようにまでなりましたが、熊に対峙するのはまだまだです。宮沢賢治の『なめとこ山の熊』にも出てきたように、熊に向き合える猟師さんというのはどうも格があります。肝を据えて呑まれず気を抜かず。地域の猟師さんも高齢化が進み、いつまでも頼るわけにはいかなくなってきているので、そのうち引き継げるようにならなければいけないのですが、まさか熊にまで向き合えるようにならなければいけないとは。そうすぐではないはずですが、あまり時間はありません。身を引締めてこれからを見据える必要が見えてきました。


森に人を呼びながら、森から熊を排除しない。亀の歩みで間に合うことを望みます。

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