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怖れおののき恩にきる

夏といえば、楽しい盛り上がりの他に、怖いものが急に人気になりますね。怪談話、肝試し、お化け屋敷など。基本的に刺激に飢えることの少ない性質なので、怪談も肝試しもできればお断り願うのですが、お化け屋敷はそうもいきません。まだ中学生になるかならないかの頃、どこかの学祭のお化け屋敷で、糸に下げたコンニャクがもろに首筋に当たったことがあります。そんなネタがあることは知っていても実際にヒットする人はどうも多くないようなので、もしかして良い経験だったのかもしれませんが、その時私が発した悲鳴は「キャーッ」ではなく「ヒィィ」であった可能性が圧倒的に高く、まだ女子力なんてものが測られる時代でなくてよかったです。

それはそうと、今私の周りは怖いものでいっぱいなのです。水路に草むらに或は木の上にも。潜むその正体は、蛇たちです。うちは生態系をなるべく自然にしておくという結構な方針のため、あまり草刈りに熱心ではありません。その結果生き物が多くて楽しいのですが、彼らもまた潜み放題になるわけです。基本的に蛇は臆病な生き物なので、カサッと音がすると見えるのは尻尾ばかりであることがほとんどです。しかしそれが週に2回程も見かけるし、極小さいというわけでもなくそこそこな長さらしいので、やっぱりもう、「ヒィィ!」なのです。

毛のある動物はもちろん、様々な鳥たちも、田んぼのイモリやカエルすら、草地や畑地の捕食昆虫までも愛しく思える私はまあかなり変態的に生き物好きなのですが、だからこそ蛇は怖いのかもしれません。たくましいうちの犬も蛇は怖がるし、鶏たちにとっても侵入を防ぐことのできない恐ろしい相手です。もっと強い鳥たちやマングースなんかにはご馳走なのでしょうし、蛇を好んで食す人々もいるので、絶対に恐ろしいものではないのかもしれませんが、やはり何だか違う気がするのです。単純な動きを一所懸命繰り返す他の多くの生き物とは、生き方在り方が全然違う気がするです。私にはそれがたまらなく怖いのです。

けれどこのどうしようもなく怖いという気持ちは、自然を身近に暮らしていく上では欠かせない大切な気持ちです。恐怖があるから畏怖があり、畏怖があるから感謝があり、感謝があるから恵まれて良いのだと思うのです。もし私がもっと怖いもの知らずの征服者だったなら、暮らしはまるで違っていたでしょう。ビクリとせず暮らせるのは安心かもしれませんが、ズカズカと踏み込んでしまって毒ヘビに遭遇し、刃を向けられてしまったら一貫の終わりです。時々不運にも噛まれてしまう人もいるし、病院へ急げば助かるそうですし、噛まれる人がなめてかかっていたわけでもありません。ただ私の場合はきっと見てしまいます。噛み付いてくる時の蛇の素早さ、恐ろしさを。一生涯うなされるに十分に違いありません。

なので怖れを残しつつ、スルスルと去って行ってくださる蛇たちには感謝感謝ですね。この夏もどうぞ皆無事でありますように。草むらで静かにお過ごしくださいませ〜。

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