亀成園長 まぁちゃん

2017年9月6日4 分

田んぼピョンと跳ねて

お隣の田んぼが重たく光っています。水田風景としては初夏の水を張ってしばらくの、田植えして間もない頼りないくらいの稲の姿が好きですが、秋になって収穫間近になるのもまた、気持ちの良い鼻息が出ますね。

うちの畑は田んぼにはさまれて、草を茂らせ気味にしてあります。梅雨の日照りが空けてようやく雨が降った後、田んぼで生まれた小さなアマガエルたちが一気に畑に飛び込んで来ました。トノサマガエルは水の中でずっと暮らしますが、アマガエルは草むらで暮らすので、あっという間に畑も庭も裏庭もカエルでいっぱいになりました。それ以降、野菜について苦労していたアオムシをほとんど見かけなくなったのだから有難いものです。

小さな虫を食べてくれるアマガエルは、受け入れる我々にとって有難い生き物ですが、夏も進み、どうも有難くない生き物も頻繁に目にするようになりました。畑からピョンと田んぼに飛び出していく虫は何でしょう。微かにカチカチと独特の羽音を残して翔び去っていくのはイナゴではありませんか。トノサマバッタに似ているけど、明らかにイナゴであることを図鑑で調べてしまいました。今となっては左程被害もなかったようだし、たいして気にすることもなかったのかもしれませんが、気付いた当初はギョッとしたものです。なんせイナゴといえば「大草原の小さな家」シリーズの「プラムクリークのほとりで」に刺激的な記述があるのですから。晴天の続いた麦の収穫間近の或る日、西から突然飛来したイナゴの大群が、何もかもを食い尽くしていった場面です。後から後からやってくるイナゴに見渡す限りの地面が覆われ、イナゴたちが草をかじる不気味な音が日が沈んでも響き、あくる日家の中までウジャウジャ侵入してきたこと。更に小川まで進行して、重なり合って溺れ死に、川を埋め尽くして尚ウジャウジャ増え続けていたこと。やっとイナゴが視界から消えて絶望的ながらもホッとしていたら、土の上にビッシリ卵が残されていたこと。田んぼに跳ねていくイナゴたちを見て、思わずすくんでゾッとしてしまったのは読書の功罪でしたね。

もしかして畑から増えたのではないのかもしれないけど、お隣のお米にもし被害があっては大変とその日から密かにイナゴ捕獲作戦が始まりました。田んぼに跳ねて行く前にキャッチして鶏にパス。鶏にはとびきりのご馳走らしく、10羽の期待の視線の中、なかなか気分よく捕まることはなく、空振りが続きました。

だいぶ上手に捕まえられるようになったので、もっとモチベーションを上げるために、いっそ私も捕食してみることにしました。発酵学者の小泉武夫さんも未来は昆虫食と広言されてました。異色の学者の説を突然採用するのは単に面白そうだからに過ぎませんが、温故知新、いつ何があってもしぶとく生き抜くために、目の前の豊富なたんぱく質を見逃すわけにはいきません。鶏たちに謝りながらそそくさと私物化です。

串刺して直火は大胆過ぎたかもしれませんが、熱いうちにジュッと醤油を付けてかじるとなんとも香ばしくて、中身も焼きタラコにも似た食感で、あらあらイケるものですね。後から聞いたところフンを出すために数日置いておくらしく、そうして佃煮もしてみましたが、新鮮な方が好みの味だっことを白状しておきます。

沢山の生き物の出入りを楽しませてくれた田んぼも後ほんの少しで刈入れを迎えます。願わくば刈入れ後も水を張って、兵庫県北部のようにコウノトリが戻ってくるような環境になれば素敵ですが、それはまた未来にフックをかけることにしましょうか。その前に自分たちの田んぼが欲しいものですが、夢はひとつひとつ与えられることを信じてじっくりじっくり待っています。

飯高地域は水が美味しいのでお米も美味しいそうですよ。生産地はどこも自分とこの宣伝をするものだし、海外で安いお米に特に不満もなかった私にはあまり有り難みはわかっていないのですが、口の肥えたどなたかに一度ご賞味頂きたいものですね。刈入れの終わった田んぼもまた独特の草の香りがたまりません。青草より良い香りのこれもまた今だけの貴重な楽しみですね。

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