螺旋との出会い
朝に上の子たちを学校に送り出した後、残りの四人と一匹でお散歩することが多いです。雨やら火急の用事やらひどい寝坊やらがない限り、半時間ばかりの日課です。なるべく犬と共に川沿いや草地を歩くというのは私には発見の場でもあり、下の子たちにはもっと大発見かもしれない一時であります。マイペースな私や子供たちに合わせているとなかなか進まないこともしばしばで、お父さんと犬には忍耐の時間かもしれないですけどね。

お散歩には幾つか定番のコースがあり、時間の余裕や体力具合、時間帯によって適当に選ぶようにしています。犬はいつだって他の犬の臭いの強いところに行きたいのですが、なかなか主導権はとれませんよ。たまに私とデートの時は好き勝手に進ませてやりますが、つくづく臭いに従って行動しているのがよくわかります。
定番散歩コースも、四季により目につくものは次々に変化します。もしお楽しみの食があれば優先的に足が向き、採集に明け暮れることになりますが、今回のメインの発見は、草刈りの後に急に目立って伸びたねじり花でした。

ピントが合っておりませんが、濃いピンクのスキッと伸びたやつらです。大人の目には、ちょっと気になる、くらいの存在感だったのですが、小さな子供には何倍もの魅力があったようです。5歳の恐竜好き男児には形だかなんだかがツノ竜の模様に見えたらしく、「カスモサウルスの草」と認識したようです。カスモサスルスって、トリケラトプスより小型でえり飾りのところに大きな目玉みたいな模様のある白亜紀後期の恐竜で、わりと人気があります。略して「カスモ」というところもなんかかっこいいのか、カスモ、カスモと連呼してねじり花を探しまくっていました。
小さな妹も兄を模倣して、あっという間にねじり花に夢中です。同じだけ集めないと気が済まない厄介な要求を出してきて停滞も甚だしいですが、二人でしゃがんで野の花を探している姿はなんだか尊い姿に見えて、たまには思いっきり寄り道を許してやりました。

一面に生えているわけではないので、ちょっと歩いては幾つか見つけ、また目線をズラして探しては花を集めていました。それでもいくらでも生えているのがいわゆる雑草のいいところですね。たくさんたくさん集めたいという欲求を満たすのに、野の花遊びほど最適な解決法はないです。
たくさん集めて何をするかって、投げつけるだけのことです。集めては投げ、またたっぷり集めては投げるのです。珍しく温かく待った甲斐あってか、朝からフラワーシャワーを浴びさせてもらいましたよ。

いつもより長くお散歩で寄り道してしまうと、後の調整はわりと大変です。どれほど有閑であれど雑事、用事は皆無ではないのですから。それでもこのとき5歳児と1歳児がこの小さな花と接した時間は、私にはとても眩しい一時に思えるのです。自ら螺旋を描いてプチプチと咲いている花にこの子たちは何を感じたのかな。他の草花が隆盛してくる前に、後何度フラワーシャワーをふらせられるかな。一つひとつの出会いをゆったりと味わえるから、有閑散歩はやめられません。