コロナウイルス騒動でゲストハウスも地域ガイドもお仕事にならず、ダメージは大きいはずの亀成園ですが、なんだかのほほんと暮らしているのは、新しいヒヨコに夢中なことも大きな要因です。どんな時代になろうとも食べて生きることは変わらないわけで、卵を食べるには鶏が要ります。鶏が卵をよく産むのは二年程なので、雌鶏の更新は不可欠です。昨年の亀成園では烏骨鶏に抱卵してもらって増やすことをしていましたが、数羽ずつしか育たず、卵の数を確保するために今年は多めに購入しました。
我が家にやってきてすぐの写真です。生まれたてのヒヨコは身体にたっぷり栄養を蓄えているので発送が可能です。取り扱ってくれる配送業者や集配所は少ないので四日市や天理にまで引き取りにいかなくてはいけませんが、一羽三百円の取引でヒヨコを買うことができます。ちなみにオスは五十円かそこらです。ヒヨコのうちは可愛いけれど家畜としての価値は低いので、需要が少ないためにシビアな妥当な設定ですね。
とにかく寒さに弱いヒヨコたち。薪ストーブのある土間で、発酵熱のあるエサの上に木箱を置き、毛布や湯たんぽで温度調節をしながらの飼育です。
一羽二羽では寒くて弱りがちなヒヨコですが、十羽以上もいればお互いの熱でかなり温まります。でも寒いと密集して(流行りのヤバいワードですね)しまい、おしくらまんじゅうが激しくなるとつぶれてしまうこともあるので、触れ合いながらも自由に動き回っている状態が理想的です。ちょこちょこ動いてくれると安心。じっとしていると気になって気になって。赤子というのは本当にこちらの関心を引く生き物です。
とにかくしっかり温めるのですが、逆に暑すぎても体力を奪われてしまうので、温度管理は難しい。まあかく言う人間とても大体一年中暑いだ寒いだと温度のことでばかり文句をこぼしているものなので、つべこべ言わずわかってあげなくちゃいけませんね。なにせヒヨコは命に関わるのですから。ある程度温かくして食べやすい餌と水飲みを付けてあげれば、ピヨピヨピヨピヨと育ってくれました。
生後五日の元気な姿です。水もうまく飲めるようになりました。
幸い今回は落伍者を出すことなくここまできたので安心ですが、今度は箱から脱走しようとする子も出てきました。寝てばかりいた赤子がはい出したときのようです。人間の赤ちゃんも動き出したら怪我をしないかハラハラさせられますが、なにせヒヨコはうっかり外に出たらまたあっという間に命の危険です。昼間はカラスやトンビ、夜はふくろうにイタチにとヒヨコを狙う生き物には事欠かない山間部。うっかり外に出して目を離してしまったらと思うとぞっとします。我が子(私の場合今はヒヨコですが)を守りたいのはみな同じで、幼子を抱えら肉食の生き物にとってヒヨコなんて格好の的になりますから。自由に外遊びをさせてあげたい気もあるけどぐっと守る時期です。うん、ぐっと我慢して守るって今は大事。
先週から保育園も自粛になって、4歳の末娘も家にいるようになりました。姉たちは労働力として家仕事外仕事を手伝わなくてはいけなくて、勉強もしなくちゃいけなくて、息子は勝手に自堕落に暮らしているだけなので、おチビちゃんは退屈しちゃうかなと少し懸念しておりましたが、ヒヨコがそばにいるおかげでご機嫌に暮らしています。昨年まではヒヨコを握りつぶす勢いで抱きしめていたからそれも心配でしたが、今年は慣れたのかちょうどよい加減。子供には触らせないという手もあるのだろうけれど、こんな可愛いヒヨコたち、触りたくもなりますね。生き物に慣れていない子が近付こうとすると私もストップかけてしまうかもしれませんが、柔らかさとぬくもりにちょっとだけでも触れたなら、子供の心も柔らかく温かくなるのだと信じています。なのでわりと好き勝手に覗いて手を入れて餌を足して楽しむ小さな娘です。ちょうど襟のところに紐が付いていた服を着ていた娘が、ヒヨコ(♂)と遊ぶところに出くわしました。
鶏は紐を引っ張るのが好きです。靴紐や裾の紐、しゃがんだときのパーカーの紐など鶏舎でいつも引っ張られます。残飯をあげるときも焼きそばがえらく人気なこともあり、ひも状のものはミミズに見えるのですかね。ヒヨコが紐を引っ張る。ただそれだけのことなのですが、習性を理解して遊びに変えてしまう子供の姿が私には眩しかったです。
恐ろしく我慢の多いGWになってしまいましたが、生き物たちは変わらず動いて育っています。ツバメも飛び交い、魚も跳ね回り、一年でも本当に見どころの多いこの時期。また季節が巡ってたくさんのゲストを迎えることができますように。そのときはこのヒヨコたちはすっかり立派になっちゃっておりますが、また命は巡ります。今年を守り抜いて、次につなげていきたいですね。
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