長女が小学校に入学してすぐのある日、当時のPTA会長さんが先生と一緒にうちにやって来ました。通学路の道を渡る所に木製の安全坊やを設置してくれるという申し出でした。まだ越して間もない頃だったので、一人の生徒のために新しく安全坊やを付けるなんて、しかも車通りが多いとも思えないこんな道でと驚きの一件でした。その後地域の道を通る時によく見ると、確かに子供が毎日通る交差点などには必ず一つ設置されていることに気付きました。だんだんどこにどの子が住んでいるかわかってくると、それぞれの子を見守る安全坊やたちにも親しみが湧いてきました。子供が貴重な地域では、「我が家の安全坊や」は当たり前なのですね。しかもまだ学校には余りが沢山あるらしく、昔はどれほど安全坊やだらけだったのでしょう。子供がいると街の風景も変わるとは、親にはなんだか温かい話です。
ところで先日の台風の後、我が家の安全坊や君が見当たらなくなりました。なんと風に飛ばされて橋の下に落ちてしまったのです。幸い夏休み中で、あまり勝手にうろつかない我が子たちが危険な目に遭うことはなかったですが、学校が始まる前に是非とも安全坊や君を助け出さなければなりません。とはいえ落ちたところはちょうど汚水が落ちるところで長靴履いて手袋はめてじゃなけりゃとても助けに行けません。何日も気にしながらもためらっているのを後押ししてくれたのは2歳前の末娘です。散歩で通るたびに落ちちゃった安全坊やを見たがり、「おちてるねぇ、おちてるねぇ」と心配し続けたのです。いつまでもこの小さな娘に心配をかけてはいかんとエイやと覚悟を決めて、救出作戦決行です。
一旦連れて帰ってゴシゴシ洗って乾かして、後日改めて設置しました。今度はもう落ちないように頑丈に慎重に。
よかったね安全坊や。きれいになってなんだか誇らしげです。台風落下事件は安全坊やには災難だったけど、落ちてくれたおかげで救出作戦が行えて、今までより親しみを感じる物になりました。災い転じて福と為す。これも好きな言葉の一つですよ。
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