もうずいぶんと晴れた日ばかりが続いています。台風の被害がないのはありがたいのですが、雨のない夏はなんだか物足りないです。長梅雨のおかげで水不足ということはないものの、もくもくと大きく湧いた入道雲に捕まえられそうなどしゃぶりの雨は夏の醍醐味の一つなのですから。雨がないと物足りないことのもう一つは、匂いが少なくなることかなとも思います。雨の降る前と雨の中、そしてその後の晴れた時間と短い間に変化する夏の匂いが好きです。ダイナミックな雲からもたらされる夏の日が恋しくてたまらなります。
夏らしい理想の一日を妄想します。どこかの記憶にあった幸せな夏の日。
爽やかな朝のあとカーっと晴れて、朝顔と向日葵がにこやかに咲き、セミの声を聞きながら午前中にあらかたの用事を済ませてしまう。お昼に薬味たっぷりの素麺をちゅるちゅる食べて、暑い昼間に川遊びに行って夢中になっていると雲行きが怪しくなって引き上げたら途端に夕立がザバーっと。山の上で雷がどこどこ鳴って田んぼに降る雨の音がパンパン聞こえて、でも波が引くように雨雲が去ってまた晴れる。たっぷり湿った土から立ち上る臭いをかいで、夕暮れまで外で過ごす。風鈴の音が聞こえて、ヒグラシが鳴いて、一番星が見える。長い夜に面白い話を聞いて少しだけ線香花火をする。今日は平和な日だったな、今度海に行きたいなと思いながらトロトロと眠りに落ちていく。
妄想の夏は、暑いけれど救いがあります。爽やかな風と恵みの雨。そして生き生きとした植物の姿。現実の雨のない夏日続きに枯れていく植物が多いのは切ないものです。
今年久しぶりに夏バテになりました。健康食を謳っているのに情けないもの、と落ち込んでいたら愛犬もバテておりました。これはもう仕方ないかとせめて落ち込まないようにしています。そろそろ雨雲が戻ってきそうですが、どうぞ猛暑お見舞い下さいね。
過ごしやすく季節が移ったら、美しい香肌峡の秋を楽しむお散歩企画を考えています。長かった梅雨、あきれるほどの猛暑続き、なくなってしまった祭典にお祭りの数々。それでもまた人の巡りがあることを信じて。時を待ちましょう。旅に出たいのに出られずに募った思いがたくさんあります。オンラインで対応しようとしても、やっぱりうずうずしてたまらなくなって、研ぎ澄まされた思いがあります。
日本野鳥の会名誉会長の柳生博さんのことばにぐっときたのがありました。
「確かな未来は懐かしい風景の中にある」と。
ノスタルジーばかりに浸ってしまうと現実から目を逸らす懸念はありますが、懐かしいような風景を求めながら前に進んでいくことはできます。亀成園を訪れる人の中には、初めて訪れたのに既知感をお持ちになる方がかなり多くおられます。古民家・原風景・素っ気なくない人の距離感。今ここにあるものはきっと守られるべくして残ってきたのでしょう。いつまでもあるとは限らないけれど、こんなにも求めるものがはっきりした夏を経て、守っていけなかったら顔が立ちませんね。夏バテから立ち直ったら、新たなステージです。
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