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執筆者の写真亀成園長 まぁちゃん

切なさを飲んでやる

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日本にいると毎年桜の季節がやってきます。もちろん美しい、もちろん心浮き立つ、ああこれでこそともちろん知っているけれど、あんまりあっという間に過ぎ去るのが悔しくて、切なくて、素直に好きになれません。名残だけ突きつけて去ってしまう桜というヤツにちょっと背を向けていたくあるのです。

更にあんまり花だけ一瞬のソメイヨシノより、私は山桜やぼたん桜のほうが好きよ、ともいつも言ってしまいます。きっとソメイヨシノに聞かせたくて。イマイチな女心なのですね。だってやっぱり見に行くんだもの。咲いたらウキウキして、雨が心配で、散り様にもうっとりして。普通に好きと言えば楽なのに、そう言っちゃうと心の多くを持っていかれちゃいそうでこわいのです。あぁ、めんどくさい。でもそれ程、一年のほんの一時にかけるパワーには圧倒されて当たり前なのだと思います。

しかし圧倒されてばかりでもいられないので、もう少し踏ん張ることにしました。乙女ではなくお母ちゃんなので、生産性にどん欲でいてよいのです。

桜を集めて、塩漬けして、桜茶を作ったのです。

昔頂いたことのある桜茶が美味しかったから。あの香を自分で残せれば、切なさも少しやわらぐのではないかしら。本来はぼたん桜で作るそうですが、もうたまらなく実行にうつしました。

咲いている花を摘むのは少し申し訳ないけれど、人口比でいってもあまりにもあまりにも咲いているのし、散歩しながら少しずつ、手の届くところの花を集めていきました。そしてこの時も山桜を多めに集めましたよ。

きれいに洗って塩をかけ、酢を振り入れて一晩待ちました。もっと待ちたい気持ちと待ちきれない気持ちがちょうど重なったところで、ひと摑みお湯のみに入れてお湯を注いで、さあご覧。

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春が乱れています。つかみたくてもつかめなかった桜たちが閉じ込められ、再び良い香りを放ってくれました。

閉じ込めてしまったことはなんだか却って切ないです。それでもその気持ち全部飲めるのは、嬉しいことなんです。ガクはとっても苦くて、美味しいのは山桜の葉っぱだったので、私が山桜をより愛していたのは正しかったこともわかりました。これはほくそ笑みに値します。

あゝ美しき桜たち、私はこれからもっと好きになれそうです。毎年うっとりは短いけれど、必ず閉じ込めてあげましょう。もう少し大きくなった葉っぱも塩漬けにして、桜餅にしちゃいましょう。

花も団子も茶も好きです。五感をフル稼動で花を愛でられるようになるとは歳をとった甲斐もありました。さあて明日はぼたん桜ハンターになりましょうかね。

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