信じる、守る、信じる

家の前から坂道をゆるく上がっていったところに、10体ほどの母子観音像があります。とりわけ子供の少ないこの地域に、全校児童の数と同じくらいの赤子たちが小さく賑やかにまとわりついています。私はここに来るといつも手を合わせて祈るのです。ここで育つ子供たちが皆、温かく守られてすくすくと育ちますように。またこの地で生まれ育つ子供たちが増えていきますようにと。そのためには草むしりを早急にしなけりゃいけなさそうですけどね。

子供が両手でつかみきれなくなってから、つまり3人を超えてからは、毎日が神頼みです。2人の頃はまだ、私が本気を出せばまとめて守ってあげられると己を過信しておりました。もちろん何もかも一人でこなしていたわけでなく、種々様々な力を借りながらの奮闘であったわけですが、両目両耳両手両足を駆使すれば2人の子供をなんとかできるとタカをくくっていたのは恥ずかしい事実です。

いつもどこかで神頼みをしていながらも、何故か心が殺伐としていたのは、信じ切れていなかったからかなぁと今では驚きですが、まあそれだけ肩に力を入れて頑張っていたのです。

3人に増えてから、急に信心深くなったわけではないし、今も特定の信仰を持てているわけではありません。でも、子供が何か大きな力に守られていると、信じて委ねなければ私の力ではどうにもできないってことがよくあるんです。もし運が悪ければ、もしどこかで悪意が動けば、もし打ち所が悪ければ、えらいことになってたわぁってことが次々に起こるのが、小さな子のそばにいる保護者の宿命なのですから。

つい先日も5歳の息子が木から見事に落ちました。忍者ハットリ君のようにふわりと落下したように見えたのですが、実は足を滑らせたらしく、初めての骨折を体験することになりました。救急車も乗ったし、軽い怪我とは言えませんが、打ち所が良かったのもまた事実で、意識もはっきり口も減らず、ふざけて悪化させないようにヒヤヒヤの日々になりました。

もちろん子供をしっかり見張って場を区切って安全に万全対策をしていれば、滅多なことは起こらないのです。きっとほぼ自力で子供を守ることができるのでしょう。けれど私はできる限り野放しを推奨しております。目は届くけど手には届かないところで伸び伸び遊ぶ姿がたまらなく好きなのです。木登りとか水遊びとか大工道具使うとか、いかにも楽しいけれど危険と隣り合わせ、というやつを止めたくないのです。いつかは私の手を離れる若い人たちに、生きる力を付けないでどうする、というのが、昔の本を愛読しまくる私の暴走気味の信念でしょう。日本の戦前とか北米の開拓者とかはたまたもっと北国の農村とか、生きる力と知恵に満ちている物語がそれはそれは好きなので、つい自分もと混同してしまうのですね。まあ田舎暮らしを楽しむにはちょうど良い目標となって良いものですが、子供たちには迷惑なこともあるかもしれません。結果はいずれついてくるでしょう。逃げられるか飛びこえられるか、どちらにせよ今は信じて見守るだけです。

とはいうものの野山や川に何も考えずに入っていくのは危険極まりない行為です。近くの山や川でも毎年事故や遭難はあるらしく、冒険家の心を最大限応援しながら子供たちや自分自身も守るために何ができるのでしょう。

五感を高めることと、気を強くもつこと、堂々と撤退すること、この三つが欠かせないかな、と弱いながらもルールにすることにしました。どれも簡単ではないけれど、己に言い聞かせ続けていかねばなりません。

それでもどうにもならないときは、ただひたすら信じることです。心配なんかしないことです。我が子はきっと守られている、と無条件に信じられたらどんなに穏やかな日々が過ごせることでしょう。グリム童話の「ゆき白とばら紅」というお話の最初あたりに好きな箇所があります。二人の少女が森に好きに入って行って、ときには一晩明かして帰ってくることもあるそうなのに、お母さんはなんの心配もしていないというのです。実際この子たちは天使に守られていて、森で光を見たこともあるのですと。くだらない喧嘩ばかりの我が子たちが特別に天使に守られていると信じるのは多少以上に図々しい気がして信じきれはしませんが、お地蔵さまなら守ってくれるかな。観音さまなら温かく見ていてくれるかな。ともかくどんな尊いものでもいいから、どうぞ守ってくださいね、と静かに手を合わせます。その目を離した間に転んだと思ったら見事に手をついていたり、私が手を合わせるのを真似して手を合わせながら口に出すお祈りは「おやついっぱい食べれますように」ばかりなあたり、十分守られていますね。今までも、きっとこれからも。

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